「№1調査商法にご用心! 冷風機業界にもそんな低モラルの会社が」

先日、市場調査会社の業界団体である日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が、非公正な「No.1調査」に対する抗議状を協会サイトに公開したという記事が、ヤフーニュースやJ-CASTニュースで掲載されていた。
「当協会は、『No.1を取得させる』という『結論先にありき』で『No.1調査』を請け負う事業者やこれらをあっせんする事業者に対して、厳重に抗議し、中立的立場で公正に『No.1調査』を行うべきことを要請します」――というものだ。

【参照】JMRAが「非公正な『No.1調査』への抗議状」- Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/e0299cb1895cb4ed9965b8b61b7cab4a0e629255

【参照】ウェブは「NO.1」ばかり!? 問われるアフィリエイト広告の信ぴょう性
https://www.j-cast.com/kaisha/2022/02/26431671.html?p=all

背後には「No.1を取らせる」「必ずNo.1にする」と営業をかける調査会社と、安易に依頼する企業の存在があるらしい。
確かに最近の広告には「No.1」、「第1位」、「トップ」、「日本一」などのロゴマークが目立つ。お客様満足度など、なにかにつけて「No.1の企業」が溢れている。世の中こんなにNo.1企業ばかりなのか?と疑問に思う。
日本マーケティング・リサーチ協会に加盟していない調査会社が仕組んでいるということなのだろうか。

そういえば「No.1表示」を強調した広告表記は冷風機業界でも見かける。「工場長が選ぶNo.1」「学校関係者が選ぶNo.1」「工場スタッフが選ぶ品揃え満足度No.1」などだ。
「調査方法:インターネット調査」となっている。
「アンケートモニター提供元:ゼネラルリサーチ」となっている。

「No.1表示」調査は、ほとんどがインターネット調査によるものだが、そもそもインターネット調査には、インターネットの利用者でなければ調査対象にならないという制約がある。このことはインターネット調査の質に少なからず影響を与えているだろう。
インターネットの利用状況には、世代、性、都市規模、年収などの各要因により、かなりの格差があって、偏りが生じているから、無作為抽出になっていないのだ。
それでもインターネットのアンケート調査が増えているのは、コストを掛けず、手軽に行えるからだろう。
郵便でアンケート用紙を送ったり、電話をかけて話しを聞いたり、直接家庭に訪問して質問した調査では、労力のほか、郵便代や用紙代も掛かる。アンケートに対する答えがもらえなかったり、目的の人が自宅にいないこともある。手間がかからず、安価で行えるインターネットを利用したアンケート調査を行う企業が増えているのは頷ける。
目的とする調査自体が、インターネット利用者を前提としたものであるなら、有用なのかもしれない。リアルな調査との併用であれば、バイアスも減るだろう。
そして、信頼ある調査会社が行った調査で、信憑性のある客観的な根拠資料となるならば、インターネットでのアンケート調査自体も、全く使えない調査ではないと思う。

【参照】https://toukeigaku-jouhou.info/2015/08/25/398/

日本マーケティング・リサーチ協会は1975年設立で、インテージやマクロミル、日経リサーチ、矢野経済研究所など約120社の調査会社が加盟する。
同協会の綱領では、「リサーチプロジェクトは、適法、公明正大、誠実、客観的でなければならず、かつ、適切な科学的諸原則に基づいて実施されなければならない」と明記されている。
もし実際に同協会が訴えるように「貴社がNo.1になる設問を考えたアンケート」で「No.1を取らせるアンケートができる」と誘う調査会社が存在するならば、少し調査コストを上乗せしても、その調査に飛びつく企業があるだろう。
またはその逆もありえる。企業側から広告効果を上げるために「No.1になれるような設問でアンケートを取ってほしい」と調査会社に提案するのだ。どちらもモラルある会社とは言えない。
当然その「No.1表示」は、客観的な根拠資料とならない。消費者は誤解したまま購入することになりかねない。そのため必要に応じて客観的なデータを示す必要がある。
下記のサイトでは某冷風機メーカーの「No.1表示」におけるアンケートモニター提供元のゼネラルリサーチ社についての記載があった。

【参照】https://zoukyou.tokyo/award/
【参照】https://fieldreport.jp/1076-2/archives/770

公正取引委員会は広告などの表示物において「No.1」「第1位」「トップ」「日本一」などと強調する表示(いわゆる「No.1表示」)について、その具体的根拠が記載されていない、分かりにくいとの指摘があることなどから、消費者モニターを活用してNo.1表示に関する実態調査を行い、景品表示法上の考え方を整理している。

公正取引委員会の「No.1表示」についての景品表示法上の考え方
商品等の内容の優良性や取引条件の有利性を表す「No.1表示」が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、景品表示法上問題となる。

望ましい表示
(1) 商品等の範囲に関する表示
「No.1表示」の根拠となる調査結果に即して、一般消費者が理解することができるように「No.1表示」の対象となる商品等の範囲を明りょうに表示すること。
(2) 地理的範囲に関する表示
「No.1表示」の根拠となる調査結果に即して、調査対象となった地域を、都道府県、市町村等の行政区画に基づいて明りょうに表示すること。
(3) 調査期間・時点に関する表示
「No.1表示」は、直近の調査結果に基づいて表示するとともに、「No.1表示」の根拠となる調査の対象となった期間・時点を明りょうに表示すること。
(4)「No.1表示」の根拠となる調査の出典に関する表示
「No.1表示」の根拠となる調査の出典を具体的かつ明りょうに表示すること。

例えば、ある調査会社が行った調査結果に基づく「No.1表示」の場合には、
調査会社名及び調査の名称を表示すること。
調査の出典とともにその調査方法や調査結果について、表示物にホームページアドレスを記載するなどして、一般消費者が確認できるようにすることも一つの方法
第三者が調査した既存のランク付け等を根拠に「No.1表示」を行う場合には、当該調査が客観的に実証された根拠に基づくものかどうかを確認すること。

【参照】「No.1表示に関する実態調査について(概要)」
(公正取引委員会のサイトより)
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/cyosa/cyosa-hyoji/h20/08061302.html

【参照】公正取引委員会「No.1表示に関する実態調査報告書」
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/cyosa/cyosa-hyoji/h20/08061302_files/08061302-01-hontai.pdf

「No.1表示に関する実態調査報告書」で、「No.1表記」は景品表示法上、問題となる場合があると指摘している。
不当表示(有利・優良誤認)にならないためには、「①No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること②調査結果を正確かつ適正に引用していることの両方を満たす必要がある」と示す。

景品表示法違反で行政処分を受けた企業の例もあった。

【参照】
「No.1商法」に業界団体が抗議状 市場調査でやらせ横行…「社会的信頼を損なう」「看過できない」危機感あらわ
https://www.j-cast.com/2022/02/03430291.html?p=all

「No.1」という文言は市場の中での優位性を確立するのに非常に有効だ。商品やサービスの広告表示でNo.1を表記する場合は、信憑性のある客観的な根拠として消費者に伝わらなければ意味がない。
客観的に裏付けされたデータや根拠資料の公開が不可欠で、それを行わず、故意的に誤認されるように仕組まれた表記は、景品表示法上の問題となる。

因みにイーズがNo.1と主張しているときには、必ず客観的なデータで示せるようにしている。
例えばヒートポンプのCOPでNo.1と表記する際には、公開されている一般社団法人日本施設園芸協会のヒートポンプ格付認定機種の中で№1である。というように。

どの業界にも低モラル企業は存在する。真面目な企業が馬鹿をみることのないよう、掲載されている「No.1表示」は本当に信憑性があるものなのか、客観的に裏付けされたデータや根拠資料が示されるものなのか、モラルある企業が調査したモラルある企業の広告なのか、慎重に見極めて決して騙されないようにしたいものだ。

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